欅坂46の菅井友香が挑む初主演舞台『飛龍伝2020』が、1月30日(木)から新国立劇場 中劇場にて上演される(29日はプレビュー公演)。
1973年に初演された、故・つかこうへいの『飛龍伝』は、1990年、銀座セゾン劇場のプロデューサーだった岡村俊一との出会いによりショーアップされた群衆劇に変貌し、その年、読売文学賞の戯曲賞を受賞、つかこうへいの代表作となった。
『飛龍伝』の神林美智子といえば、名立たる俳優が演じてきた大役。その8代目を演じるのが、2016年に「サイレントマジョリティー」でCDデビュー、「黒い羊」で日本レコード大賞優秀作品賞を受賞したアイドルグループ欅坂46”のキャプテンの菅井友香だ。
共演には、もはや“つか作品”には欠かせない、お笑いコンビNON STYLE”の石田 明や味方良介が集い、そのほかにも細貝 圭、小柳 心、久保田 創、小澤亮太、須藤公一、大石敦士、吉田智則など実力派が顔を揃えている。
そこで本作で主演を務める菅井友香に今作にかける熱い想いや、演じる神林美智子という人物との共通項などを聞いた。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 岩田えり

◆歴代の演じてきた方の名前を見るだけで背筋が伸びる
ーー 故・つかこうへいさんの傑作『飛龍伝』。過去には、初代の富田靖子さんから7代目の桐谷美玲さんまで錚々たる俳優が挑んだ神林美智子 役ですが、8代目に菅井さんが演じることになりました。

出演が決まってびっくりしました! 私の人生でこんなことが起こるなんて衝撃的で、歴代の演じてきた方の名前を見るだけで背筋が伸びるので、緊張と不安と楽しみ、いろんな感情が入り乱れました。

ーー 本作は、“全学共闘会議(全共闘)”、いわゆる1960年代の学生運動モチーフにしていますが、菅井さんのブログでお父様と学生運動のお話をしていたときに出演のオファーがあったと書かれていましたね。

そうなんです。ニュース系の番組に出演することが決まって、香港の学生のデモの運動がタイムリーだったので父に内容を聞いたら、「日本でも香港と同じようなことがあったんだよ」と話している最中に電話が鳴って、「『飛龍伝』に出ませんか」とお話をいただいて、胸がドキドキして運命を感じました。

ーー すごい偶然ですね。

はい、驚いています。私にとっては日本の歴史を学びたいと思っていたところだったので、「演じさせてください」と即答しました。それ以上に、つかこうへいさんの作品へ出演することに両親も喜んでくれたので嬉しくって(笑)。これまでお芝居も、欅坂46メンバーとして数本ぐらいに出演しただけだったし、日本の近代史も身近ではなかったので、この作品でいろいろなことを学びたいと思っています。

ーー 『飛龍伝』は1960年代が舞台ですが、現代と似ていると感じるところはありますか。

時代背景は東京オリンピック大阪万博を迎え活気のあった時期です。現代では、渋谷に行けば再開発が進んで新しい建物が増えていますし、時代の流れが変わっていく節目を描いているところが共通していると思います。

ーー 菅井さんのビジュアルインパクトがありますね。

ファンの方からメッセージアプリで「カッコよかった」「本番が楽しみ」と多くの声をいただいて嬉しかったです。欅坂46メンバーにも直接言っていなかったので驚いていましたけど、メンバーも「年末で忙しくなるけど体調に気をつけて稽古をしてね」と言ってくれて。特に小池美波が面白いメッセージを送ってくれて元気が出ましたね(笑)ビジュアル撮影のときは、顔を汚したり、服を切ったり、身が引き締まる緊張感がありました。叫びながら撮影することもあって、最初は上手にできなくて難しかったのですが、演出の岡村俊一さんが「大切な人が目の前で倒れていると思って叫んで欲しい」と指導してくださって、そのアドバイスを意識して撮影に臨みました。

◆作品のメッセージを伝えられるように死に物狂いで◆
ーー そして、舞台初主演になりますね。

まだ信じられなくて、主演にふさわしい神林美智子にならないといけないし、お芝居の実力もつけて、この作品のメッセージを伝えられるように死に物狂いで頑張りたいです。

ーー 神林美智子はどのような人物だと思いますか。

地方の出身で、生まれも育ちも恵まれている女の子ですが、“愛”に飢えていたり、ちょっとつらい幼少期を送ってもいます。キラキラした世界が広がっていると思って憧れの東京に出てきたら、現実はもっと過酷で。様々な困難に巻き込まれ、青春を上手に送れなかったけれど、そのなかで大好きな人と出会えたことは素晴らしいと思うし、決して不幸なだけの女の子ではないと思います。

ーー 稽古はいかがですか。

周りのキャストの皆さんのお芝居に対する熱量がすごくて、お稽古で圧倒されてしまいました。そんな環境で一緒に演じられるので、自然と心が動かされることが多くて、今は相手の台詞をよく聞いたり、心がどう動くのか意識して稽古をしています。石田 明さんはご一緒するシーンを稽古したときに、顔を真っ赤にされながら台詞を熱く読まれて迫力があって、感性豊かな方だと思いました。それに、(神林)美智子が恋をする桂木順一郎を演じる味方良介さんは本当にお芝居が上手で、稽古中でないときも思わず“桂木さん”と呼んでしまうぐらいぴったりな役だと思います。美智子は“全共闘”に属している学生40万人の命を預かる委員長になる女の子なので、相当な覚悟と責任感がなければ務まらないと思って、姿勢で強さを見せたり、太めの声でリーダーらしい表現ができるようになりたいです。

ーー つかさんの舞台の稽古は大変だと聞きます。

大変なところもあるけど、とにかく皆さんが優しくて、困っているとすぐにアドバイスをくれたり、格闘シーンも最後まで残って練習に付き合ってくださるんです。しかも、皆さん面白い方ばかりなので、稽古場ではいつも誰かが笑わせてくれます。

ーー 体力をかなり使うお芝居だと思います。

お稽古の初めに皆さんと腕立てや腹筋や体幹のトレーニングをする時間がきつくて(笑)ダンスをやっているので、普段からジムで練習をしているはずなのに、それよりもハードです。でも、皆さんと一緒に毎日トレーニングをしていたら自然と体力もつくし、大きな声を出せるようになると思っています。自宅ではボイトレの先生に教えてもらった滑舌のトレーニングもしています。それに、私は女子高育ちで、グループ女の子ばかりなので、男性が多い空間は新鮮です。

ーー 稽古場での印象的なアドバイスはありますか。

味方さんに「あまり動こうと意識しないで、ここに立つと決めたら堂々と立ってお芝居をしたらいいよ」と言われたことが印象に残っています。少しずつ台詞が身体に入ってきて本を持たないで稽古をするようになると、岡村さんは「自分の持てる120パーセントの力で演じて、自分の中で“やりすぎかな”というぐらいで挑戦してみよう」とおっしゃってくれました。私は思いきり演じるにはまだ勇気が必要ですが、恥ずかしがらずに演じたいと思います。

ーー 脚本を読んでみていかがですか。

ひと言で表すのは難しいのですが、いろんな人物の行動に理由や正義、信じることがあって、主人公の美智子も確固たる信念があって、それらが混ざり合って、最終的に誰も悪くないのに悲劇的な結末に向かうところに切なさが残る作品だと思いました。でも、歌やダンスに、ユーモアも散りばめられていて、お話は重たいけれど、楽しく観られる作品だと思います。

ーー これまで読んできた脚本とイメージは違いましたか。

違いました。テーマは史実を基にしている部分があるので、実際に歴史の本と照らし合わせながら脚本を読んで、美智子の心情を理解するのが難しいところがあれば演出の岡村さんに解説していただくと納得できるようになって、物語がどんどん好きになりました。

ーー 楽しみにしているシーンはありますか。

つかさんの舞台らしく今流行の曲が流れるのですが、歌うのが好きだし、ダンス欅坂46っぽいフリをつけてくださっているので、須藤公一さんに「欅坂46の力を見せて」といじられたりしながら(笑)、みんなで歌ったり踊るのが楽しいです。

欅坂46の活動では見せることがない姿を見せる◆
ーー 役づくりで大変なことはありますか。

男性以外にもいろいろな人格になったり、普段言わないハードな言葉を口にするので、最初は抵抗があったのですが、稽古をしているうちに楽しくなってきました。欅坂46の活動では見せることがない姿を見せるので緊張もしていますが、あくまで『飛龍伝2020』の神林美智子としてお客様に好きになってもらいたいです。

ーー つかこうへいさんのイメージはありますか。

つかさんが稽古場に入られる前に、キャストは演技ができるように入念に準備をしておかなくちゃいけない厳しさがあったそうですが、稽古では柔軟な方だと聞いています。そのつかさんが亡くなって10年というタイミングの意味のある作品に出演させていただけるので、気持ちを引き締めています。

ーー つかさんの意志を継ぐ演出の岡村さんの印象はいかがですか。

温かい方です。演技経験が少ない私にお芝居がわかるまで教えてくださったり、決して諦めずに何回も演技を見てくださるので、愛のある厳しさを感じて、本番までしっかり岡村さんについていきたいと思います。

◆美智子が学生を守りたい気持ちと、欅坂46メンバーを守りたい部分は似ている◆
ーー 菅井さんは欅坂46キャプテンですし、神林美智子は学生たちをまとめるリーダーで共通していますね。

私も美智子と同じように、気づいたらいつのまにかキャプテンになっていて(笑)、そのつもりがなかったのに運命に翻弄されるのは一緒だと思います。なにより、美智子が学生を守りたい気持ちと、私が欅坂46メンバーを守りたい部分は似ている気がします。私と違うところは、美智子の誰にでも正直にものを言える強さや発言力です。私はみんなに意見をするより、サポートに回りたいので、性格的には違うと思います。それでもやっぱり、愛した人や信じる人のためなら自分を犠牲にできる美智子の一途なところは憧れますね。この役を演じることで、自分の性格に美智子の良さを取り込めたら嬉しいし、舞台が終わる頃には、もう少しキャプテンらしくなれるかな(笑)

ーー (笑)グループの活動とお芝居をする感覚は違いますか。

お芝居は、メンバーがいないひとりの現場なので心細さがあって。でも、ほかの共演者の皆さんが稽古場でひとりで戦っている姿を見ていたら弱音は吐けない。なので、グループの活動に戻ると自分の居場所があることに安心するところはあります。メンバーや家族、いろんな人に感謝しなきゃいけないなとあらためて思いました。

ーー 舞台の面白さは感じていますか。

舞台は稽古があるし、物語の進み方もドラマや映画とも違った面白さがあって、みんなで切磋琢磨していく日々が楽しくて、やりがいがあります。実は、もう本番が終わるのが寂しくなっちゃって(笑)。みんなで良い作品をつくり上げようとする雰囲気や目標に向かって走っていく団結力が好きなので、これからも続けたいと思っています。

ーー 俳優になって何か感じることはありますか。

お芝居は、欅坂46ダンスや歌のパフォーマンスとはずいぶん異なっています。グループでは曲の歌詞や歌っているときの表情をいかに伝えるのかを大切にしていました。でも今作は、台詞にとらわれずに、私のありのままの感情をお芝居にぶつけていいと言われているので、身体全体を使って自分の気持ちを言葉にしてお客様に届けたいと思います。

ーー この作品を通してどのような俳優になりたいですか。

役にまっすぐ向き合って、演じる役のことを理解してあげられるようになりたいです。たとえ、みんなに嫌われちゃう役だとしても、その人の正義や考え方があっての行動だから、その役の良さを見つけてあげられる俳優になりたいです。自分とは違う人物になることができるので、立派な俳優になることは、私にとっての“夢”でもあるんです。

◆これまでの自分の殻を破った姿を見せられるように◆
ーー それでは、見どころをお願いいたします。

2020年にこれだけ素晴らしい作品に出演させていただけることを嬉しく思います。これまでの自分の殻を破った姿を見せられるように頑張るので、本番を楽しみにしてください。

ーー 最後に、菅井さんからメンバーファンの方にメッセージをお願いいたします。

なんか恥ずかしいな(笑)欅坂46のおかげで、素敵なチャンスに巡り合えることができたよ! ファンのみんなも応援ありがとう! メンバーファンの皆さんも観に来てね!

菅井友香が演じる8代目・神林美智子に注目。舞台『飛龍伝2020』で見せたい“これまでの私とは違う私”は、【es】エンタメステーションへ。
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掲載:M-ON! Press


(出典 news.nicovideo.jp)


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